【初心者講座】radiko派のアナタに敢えておすすめ!
電波でラジオを聴いてみよう!~PART02

【初心者講座】radiko派のアナタに敢えておすすめ! <br>電波でラジオを聴いてみよう!~PART02

radikoはめちゃくちゃ便利だけど、ラジオ番組はラジオで聴くメリットは多い。初心者に「電波」でラジオを聴くことの喜び?を伝える企画のつづき。(PART1はこちら)。


05 AMとFM、どっちがいいの?

AM放送とFM放送とでは、放送に使用している電波の周波数が大きく異なっている。AM放送で使っているのは中波だが、FM放送で使うのは超短波。中波は地形に対して回り込むような飛び方をするため山間部でも届きやすいのに対し、超短波は直進性が高く山などに反射されてしまうためアンテナから見通せる範囲を外れると届きにくくなる性質がある(図参照)。また、電波に音声を乗せる「変調」の仕組みも違っていて、AM放送では振幅変調、FM放送では周波数変調が使われている。

ちなみにAM放送と比較してFM放送の音が良いのは、その変調方式による差よりも、1つの放送波が放送に使用できる電波の幅(占有周波数帯域)が圧倒的に広いから。15kHzしか使えないAM放送に対して、FM放送は200kHzもの帯域を使って放送している。これだけ広いから、十分な音質でのステレオ放送が可能なのだ。


06 ワイドFMってどうなの?

都市型難聴対策、外国波混信対策、地理的・地形的難聴対策、災害対策の4つを目的に、2014年12月からスタートした、ワイドFM。正式な名前を「FM補完中継局」といい、あくまで中継局の位置づけだ。これまでに全国に47社ある民放AMラジオ局のすべてでワイドFMを開始しており、一定の成果を上げている。FM放送はAM放送よりも音が良くステレオであることから、各局とも音楽番組に力を入れるなど、編成にも影響を与えた。また、ワイドFMではこれまで使われていなかった90.0~94.9MHzを主に使用するため、ワイドFM対応ラジオの新商品が数多く発売された。

そして、2019年、総務省の有識者会議がAMラジオ局がAM放送を廃止して、ワイドFMに一本化することを容認。2021年6月には民放AMラジオ局全47社で作る「ワイドFM対応端末普及を目指す連絡会」が記者会見し、2028年秋をめどにFM局への転換を目指すと発表された。AMラジオ放送設備維持のコストや局の経営を鑑みての措置だが、昔からのAMファンからすると心中穏やかではないという人も多いだろう。

ワイドFMの登場で、クリアに、安定してラジオを楽しめるようになった(写真はラジオ日本のFM補完局送信所)。


07 電波はどこまで飛ぶの?

電波が伝わることを電波伝搬というが、中波と短波と超短波では、電波伝搬の様子が大きく異なっている。そのうち、共通しているのは、まず、送信所から見通せる範囲にまっすぐに飛んでくる「直接波」と、地面に反射した電波が届く「大地反射波」があるということ。超短波の場合には、これに建物や地形によって電波が反射する「回折波」が加わり、見通し距離を超えて電波が届くことがある。一方、短波や夜間の中波では、回折波の代わりに、電離層(地球を取り巻く電子密度が高い層)による反射波が加わり、驚くほど遠くの局が聞こえるようになる(図参照)。

さらに、太陽活動や気象条件が揃うと、本来は影響をほとんど受けないはずの超短波が電離層で反射されて、中国や韓国、ロシアのFM放送が聞こえることがある。これを異常伝播(種類によって、Eスポ、ラジオダクトなどがある)という。チャンスさえあれば、地球の裏側のラジオ局を聴くことだって夢ではないのだ。


08 遠くの放送局を聴いてみよう
(AM/ラジオNIKKEI編)

遠くの放送局を聴くときに問題となるのが、いわゆる都市雑音。最近増えてきたLED照明も雑音源となることがある。電子機器の効率が上がったせいで、それまで熱に変わっていたエネルギーが雑音へと変化しているのだ。

都市雑音から逃れるもっとも確実な方法は、都市から離れること。海でも山でもかまわないので、ちょっとだけ遠征して試してみて欲しい。放送局がない周波数の雑音レベルの低さに驚くハズ。本当に静かなのだ。そして、これまで雑音に埋もれていた弱い電波が、ちゃんと認識できるようになってくる。そうなればしめたもの、あとは時間帯やコンディションさえ整えば、目的の遠方局が聞こえるだろう。

自宅でなんとかしたいという場合には、ループアンテナやワイヤーアンテナなど、専用の外部アンテナを用意して、できればベランダや庭といった屋外に設置する。都市雑音はそのままなので遠征にはかなわないが、投資した分の効果はあるはずだ。


09 遠くの放送局を聴いてみよう(FM編)

FM放送には、一般的な県域局のほかに、コミュニティ放送局など、そもそも出力が低い放送局も混在している。遠くの放送局にかぎらず、電波が弱い放送局が多いのだ。そこで、まずはFM用外部アンテナの使用をオススメする。テレビがアナログだった頃からアンテナをいじっていないという場合には、旧アナログテレビのVHFアンテナがそのままというケースもあるだろう。その場合には、壁に来ているテレビのアンテナ端子(※)にラジオをつないでもいい。劇的な改善が望めるハズだ。

もちろん、遠征も有効だが、FM放送は都市雑音の影響を受けにくいので、都市から離れるというよりは、なるべく高くて見通しの良いところで受信するのが〇。仕事柄、超高層ビルの屋上に出られるという人はそれでもいいし、受信したい放送局がある方向に開けた小高い丘のようなところでもかまわない。仮設のFM用外部アンテナを用意できれば鬼に金棒だ。

※…BS/CS共用の場合、まれにアンテナ制御用の電圧が重畳されていることがある。ラジオが故障する原因となり得るので、電器店への相談を推奨する。


10 有事には強い味方になる!

災害はいつ起きるかわからない。だからこそ備えておきたいわけだが、そんなときに活躍するのもやっぱりラジオだ。前述したように多くのラジオは電池寿命が長く、100時間を超えるものだって珍しくない。充電などしなくても乾電池を交換すればすぐに復活するし、手回し発電機能があるラジオなら、電池を使い果たしても手回しで復活させられる。価格も数千円あればメーカー製のちゃんとしたラジオが手に入るので、リビングや玄関、カバン、非常持ち出し…等々、いろんなところに準備しておける。緊急警報放送や緊急地震速報に対応したラジオも売られているので、寝室に設置しておけば心強い。

一方、ラジオ局の送信所は十分な災害対策のもとに運用されているので、ちょっとやそっとじゃ止まらない。ほとんどの場合、送信機には予備があるし、変電所からの電源経路だって二重化されている。停電対策もバッチリで、安心なのだ。

手回し充電式のラジオも多く発売されている。写真は無印良品のMJ-RR1。

文/手島伸英(横浜探偵団)


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