ラジオ番組はスマホのradikoで聴いているけど、ラジオ(受信機)は一度も触ったことがないという人が増えている。生まれたときから、すぐそばにスマホやタブレットがあって、メールよりもLINE、テレビよりもYouTube、パソコンすら触ったことがないという世代だ。
確かにスマホは便利だけど、ラジオ番組はラジオで聴くメリットは多い。アナログの電波だから雑音が入るかも知れないし、遠くの電波は不安定かも知れない。それでもスピーカーから流れてくる音には独特なぬくもりやロマンがあり、聴く者の心を癒やしてくれるのだ。
ラジオ初心者に向け、2回にわたって「ラジオ」の仕組みや電波受信のよさを解説しよう。
01 radikoとラジオ、どっちが音が良い?
音は嗜好品だ。低音が効いたパンチのある音を好む人もいれば、もっと柔らかくて伸びのある音を好む人もいる。それでも音が情報である以上、「必要な情報がしっかり保たれているほどいい音」という考え方は間違ってはいないだろう。
ラジオはアナログの電波で送信されている。受信する方式にはアナログもデジタルも存在するが、アナログで送られてくる情報を可能なかぎりもれなく再生するよう設計されている。混信や雑音もゼロではないが、ローカル局を聴くかぎり問題になることは少ない。
一方のradikoは、48kbpsのHE-ACC(ステレオ)で圧縮して伝送されている。CDのデータ量がおよそ1411kbpsなので、それと比較するとわずか30分の1しか情報量のない音を聴いていることになる。もちろん、CDとFM、AMとではそもそもの音質が違うし、単純比較はできない。だが、radikoでは削られてしまう音があることも事実なのだ。
02 どうして電波が良いの?
まず、音が良いこと。ラジオ局の設備は電波を使って放送することを前提に設計されているので、ラジオでの受信に最適化されている。わずか10年ほどの歴史しかないradikoとは、まだまだ比較にならない。大きなスピーカーで聴いてみると、その差は歴然とするはずだ。
音の良さと関連して、遅延がないのもメリット。だから、クイズ番組で電話がかかってきたときに、まだ問題を読んでいる途中…といったことは起こらない。番組に大喜利のネタを送るときだって、他のリスナーに後れを取ることはないのである。
電源をONにしてすぐに放送が聞こえるのもラジオのメリットだ。もっさりとしたスマホの動作に悩まされることもないし、遠くの放送局を受信するときに、IDやパスワードを要求されることもない。もちろん、利用料や通信料はかからないし、料金を払い忘れて回線が止まった結果聴けない…といったことも起こらないのである。
03 そもそも、電波ってなに?
国内で地上波ラジオ放送に使われている電波は、周波数が低い方から、中波(AM放送)、短波(ラジオNIKKEI)、超短波(FM放送)の3つ。電波とは、空間を伝わっていく電磁波の波で、中波の「中」、短波の「短」、超短波の「超短」は、その電磁波が持つ周波数固有の波長の長さを示している。小さい頃、縄跳びの縄をグニャグニャと動かして遊んだことがあると思うが、ゆっくり動かすと大きな波が、早く動かすと小さな波が発生する。その山から山までの長さを波長といい、1秒間に繰り返される波長の数を周波数という。
その電波に音声を乗せて放送するわけだが、空間には放送にかぎらず様々な電波が飛び交っているため、受信するためには、それらを区別することが必要。これを「同調」という。人間は画用紙の上に何色もの色鉛筆で文字が書いてある状況で赤い文字だけを読んだり青い文字だけを読んだりできるが、ラジオもこれに似た仕組みを持っているのだ。
04 電波に音声が乗るってどういうこと?
情報が乗っていない連続した電波は、一定の周波数を持った、ただの波でしかない。ここに、何らかの情報を乗せることを「変調」という。もっともシンプルなのは、電波そのものをON/OFFして情報を送ること。モールス符号のように、あらかじめON/OFFの手順を決めておけば、文字や文章を自由に送ることができるのだ。
音声を乗せる場合にも、同様に変調が必要で、AM放送ではAmplitude Modulation=振幅変調、FM放送ではFrequency Modulation=周波数変調(角度変調ともいう)が使われている。
変調について詳しく語ると、それだけで何冊も本が書けてしまうほどなのだが、イメージとしては、遠くにいる友人に懐中電灯で情報を送ろうとするとき、その「明るさを変化」させて情報を送るのが振幅変調、明るさを変えずに「左右に動かして」情報を伝えるのが周波数変調。それを、音声の大小に合わせて行うわけだ。
文/手島伸英(横浜探偵団)