数ある全国のラジオ番組の中から編集部がおすすめするプログラムをピックアップ! 今回は古都・京都で自由に、そして時に羽目を外して番組を楽しむ声優の福山潤に、番組「福山 潤 キョウトニイケズ」(KBS京都 金曜24:00~24:30 )のこと、ラジオのことを伺った。
※「ラジオ番組表2022年春号」(2022年4月28日発売)のインタビュー記事では収まりきらなかったWEB限定完全版になります。
ー京都というと「歴史」「風流」など連想するものが多い中で、なぜ「イケズ」にフォーカスしたのですか?
福山 ディレクターさんと当時のプロデューサーさんから番組のご提案をいただいたときに、もう仮タイトルが「福山潤 キョウトニイケズ」だったんですね。京都弁の「イケズ」と、コロナ禍で実際に京都に行くのが難しい状況をかけて、「キョウトニイケズ」はどうでしょう?って。
僕は元々ダジャレ好きで、個人的にはカッコイイ名前があまり得意じゃないんです。しかも深夜で、気を抜いてバカバカしいこともやっていきたいといった気持ちが重なって、その場で「仮タイトルを本タイトルにしていいんじゃないですか」って話になりましたね。
-タイトル通りといいますか、福山さんも番組ではイケズな感じを出していますよね?
福山 そうですね。深夜ラジオが好きというのもありましたし、僕が京都との境の大阪府高槻市出身で、KBS京都さんの「はいぱぁナイト」(※)をずっと聴いていたのもあって、慣れ親しんでいた局で、一点集中で体力が続く限りできる30分という長さで、タイアップのないネタもできるのがとてもうれしかったんです。ただ、自分でいうのも何なんですが、聴きやすいラジオではないと思います(笑)。
もし僕がまだデビュー5年目ぐらいの新人だったら、こういうテイストのラジオをやるのは一種の賭けですよね。でも、僕がこれからやる役に関しては、おそらく影響はないだろうと。逆に影響があるんだとすれば、完全に僕のパフォーマンスの問題だろうと思うので、取り繕うことをやめた状態のものがあっていいんじゃないかなと。目標としては声優ファン以外にも楽しんで聴いてもらえて、「誰か分からないけれど、変な人がしゃべっている」という感覚で中高生の男の子たちが聴いてくれたたらうれしいですね。
※1989-1996年にKBS京都で放送された、若者向け深夜ラジオ番組。ミュージシャンのほか、日髙のり子、富永みーななど声優が担当し人気に。
楽しさと試練と反省が混在する番組
-子どもの頃はどんなラジオ番組を聴いてらっしゃいましたか?
福山 母親が家事をしながらラジオをつけていたので、毎朝8時から必ず「ありがとう浜村淳です」(MBSラジオ)が流れている家庭でした。中学校に入ると、クラスの中で「中学になったんだからラジオを聴きなよ」って勧誘みたいなものが行われたんですね。それで、僕らの世代だとアニメ好きも多かったので、東海ラジオさんの「熱血電波倶楽部」でアニメのスピンオフのラジオドラマとか、映像化されていないマンガのラジオドラマを聴いたり。NHKさんの「青春アドベンチャー」とか、それぞれが好きなジャンルから入っていて。いろいろなものを人の勧めで、中学3年から高校1年ぐらいは「林原めぐみのHeartful Station」(※ラジオ関西 1991-2015年放送)とか、「はいぱぁナイト」を聴いていましたね。
-今まで福山さんが担当してきた番組とは雰囲気が全く違う「キョウトニイケズ」は、始めるときに不安はありませんでしたか?
福山 実は僕、「アニラジ以外は基本やらない」っていうスタンスだったんです。アニラジだと作品がベースにあるので、役に徹することができますよね。でも、個人の番組には結構な抵抗があって。
ただ、僕は節目節目に、今までやらなかったことに挑戦したり、今まで避けてきたことに向き合う機会を設けるようにしているんです。なので、「キョウトニイケズ」のようにタガを外すことも、それで損することも含めて自分が楽しめたらいいなと今は思っています。何より僕がラジオを楽しんでいたときの面白味を、今度は皆さんに味わってもらいたいですね。
-今、福山さんは番組を楽しめていますか?
福山 楽しんではいるんですけれど、苦しんでいることもあります。現場で渡されたメッセージにその場で反応しているので、やったときに「しまった、もっとうまい処理があった」と思ったり。楽しさと試練と反省が混ざっている感じですかね。
でも、何ていえばいいのかな……。キレイなものも好きなんですけど、毒があるものもいいじゃないと何となく自分の中で思っていて。今の時代にたぶんそぐわない部分も出てくると思うんですけど、そのいい塩梅を見つけられたらいいなって。「ぶぶ漬け、どうどす?」コーナーで、リスナーの身に降りかかった対応に困る言動に、僕が代わってひたすらイヤミで返すのも、その一環ですかね。でも、毎回毎回、帰りの車でやり過ぎたと反省しています。
-女性ファンがこの番組を聴くと、「福山潤ってこんな人なの?」と驚かれるのでは?
福山 そういう人もいるでしょうし、いてくれていいですね。人はある程度の関わりがあって、「こんな一面があったんだね」とか、「仕事のときはこうだけど、プライベートはこうなんだね」って知っていくものだと思うので、このラジオで「うわー、幻滅」と思っていただけたなら儲けもんかなっていう。逆に僕だと思わずに観ていた作品で、「あんなパーソナリティなのに、こんなことするのか」って引っかかってくれたら、それはそれでうれしいです。僕は自分から「みんなにこう思ってほしい」といわないようにしているんですね。何かやったときにどう思われたかを楽しみたいというのか。理想は僕が死んだときに、自分が知る由はないですけど、葬式に来た人の間で僕の人物像がブレていることですね(笑)。
-「いい人だったね」という人もいれば……。
福山 「アイツ、ふざけやがって」って人もいて、一緒にお寿司を食べているのに話が全く合わないっていう(笑)。
「笑われてもいい」気持ちで向かう
-さて、番組もこの4月で2年目に入りますが、やってみたいことやこんな番組にしていきたいというのはありますか?
福山 スタッフの皆さんに迷惑をかけない範囲で、いろんなことはやっていきたいですね。ふざけたことを。エイプリルフールにオンエアされた回では、今までと全く違う内容にしたんです。そういうのは入れていきたいです。面白いかどうかじゃないんです。やってみたいだけなんです(笑)。
KBS京都さんの今年の元日一発目が「キョウトニイケズ」だったんですけど、「明けましておめでとうございます」で始まるのは違うんじゃないかと思って、麻雀の役を読み上げたんですね。「リーチ、一発、ツモ、ピンフ、ドラ1、満貫」から始まるっていう。おけら参りに行く京都の人も多いでしょうし、コロナ禍だけど正月ぐらいはと思って車で行って、あの大混雑を経験する人たちもいるかもしれない。車で近くにだけでも行こうという人はラジオを聴いている可能性が高いと考えたときに、新年最初に「リーチ、一発、ツモ」って流れてきたら何て思うだろうって。こういうただ単にくだらないことを受け入れてくれる局なので、僕は聴いてくれた方々に楽しんでもらえるようなものを、笑わせたいじゃなくて、笑われていいやっていう価値感でやれたらなと思っています。
あと、これは初めていいますけど、本当の番組内容とは全然違う次回予告をリスナーから募集したいんですよ。いつも「おおきに。おやかまっさんどした」で終わるんですが、最後に5秒か10秒ぐらい予告のコメントが流れるのに、次回は全然違うことをやり続けてみたいんです。ただ、場合によってはディレクターさんにすごく迷惑がかかるんですけどね(笑)。 (取材/豊田拓臣)