【受信機レビュー】防災ラジオをガチのラジオマニアが使用レポート 「無印良品 MJ-RR1」は至高の手回し充電ラジオだ!?

【受信機レビュー】防災ラジオをガチのラジオマニアが使用レポート  「無印良品 MJ-RR1」は至高の手回し充電ラジオだ!?
MJ-RR1。価格は税込みで6,990円。

2022年3月16日午後11時36分、福島県沖を震源とする地震があり、多くの地域で停電があった。都内でも復旧までにおよそ1時間かかったが、いざ情報を入手しようとしてもテレビは映らない、ネットはつながらない、頼みは電池に限りあるスマホのみ…。そうなるとやはりラジオの重要性を再認識した人も多いだろう。なかでも「防災ラジオ」とよばれる、手回し充電ができるラジオが1台あれば強い味方になってくれる…ということで、手回し充電ラジオのなかでも至高の出来、ともいえる無印良品のMJ-RR1を、「ラジオマニア」目線でレポートした記事を紹介しよう。備えあれば憂いなし――ぜひ参考にしてほしい。

 無印良品は20代~40代の女性をメインターゲットに、株式会社良品計画が全国展開する、シンプルやエコに特化した自社ブランド製品のショップである。冷凍食品から、菓子、雑貨、文具、衣料、家電、果ては家具にいたるまで、現在の取扱品目は7000点。関連店舗数は、国内外を合わせて975店舗にも及ぶという。
 そんな無印良品がラジオを発売した。その名をMJ-RR1といい、ワイドFM放送に特化した手回し充電ラジオである。
 実は、無印良品は過去にもラジオを販売していたことがある。OC223Bという手回し充電ラジオで、AM/FM放送に対応し、LEDライトを装備していた。しかし、真っ黒なデザインはとても無印良品っぽいとは言えなかったし、本体天面の時計表示や操作ボタンも、「思ってたんと違う」感が漂う物だった。

ムダをそぎ落とし、獲得した美しさ

 MJ-RR1は「全部のせ」タイプだった従来機のOC223Bから、余分な部分をとことんそぎ落とすことで雑多な感じを無くし、無印良品らしさを取り戻したラジオといえる。
 まず、ワイドFMが国内に浸透したこのタイミングで、AMラジオ機能を切り捨てた。そして、あれば便利だけど、実際には単品の懐中電灯や笛にはかなわないLEDライトや非常用ブザーも廃止。そして極めつけは、プリセットメモリー機能までそぎ落としてしまったのである。
 その一方で、製造管理をリズム時計(CITIZEN)に委託した。リズム時計は自社ブランドでも手回し充電ラジオを発売しているし、行政向けには防災無線を連動するタイプやコミュニティFMを受信するタイプの防災ラジオ(個別受信機)を展開する安心の大手メーカーだ。
 結果として、MJ-RR1は従来機より1000円ほど値上がりしたものの、無印良品らしいシンプルな美しさと品質を手に入れたのである。

ハンドルやアンテナなどはきっちり本体の溝に収納されて、普段はとてもシンプル。

シンプルなだけではない計算された操作系

 操作パネルには、スイッチ類が4つしかない。「電源」「TUNE+/-」「VOL+/-」「手回し/電池切り替え」だけである。あとは周波数/時計表示の液晶ディスプレイがあるのみ。不安になるほどシンプルだ。
 でもこれでいいのだ。実際に使うとまったく不便を感じないし、なにより直感的でわかりやすい。
 MJ-RR1の電源ボタンは長押しで操作する。入れるのも、切るのも長押しだ。電源が入ったら、あとはTUNE+/-ボタンで選局し、VOL+/-ボタンで音量を調整するだけ。TUNE+/-ボタンは、押すたびに±0.05MHzずつ周波数が変化する。さすがにこれで周波数を端から端まで移動させるのは酷である。でも、長押しすれば、スキャンモードに入って、次の放送局が見つかったら自動的に停止する。スキャンはそこそこ早いので、慣れるとけっこう快適だ。
 ちなみに、電波が弱くて止まりにくい放送局の場合は、スキャンモードに入って周波数が変化している最中に、TUNEボタンを押せば良い。+でも-でもかまわない。それでスキャンは停止する。あとは、TUNE+/-ボタンで微調整してやればいいのだ。

電源、チューニング、音量などの操作系は集約されている。なお、充電中はこのマークが表示される。動作状況がわかるのは良い。

ラジオとしての性能は必要十分

 気になる感度は「必要十分+」な印象。ロッドアンテナの全長が31.5センチと短いこともあって、お世辞にも高感度とは言えないが、ごく普通というには十分すぎる感度を持っている。地元局を聴くのに不便を感じることはないだろう。FM放送帯域の下から上まで感度にムラはなく、周波数の高いワイドFM各局もバッチリ入感する。部屋の中で電波の良い場所を探す場合も、本体が小型で軽く、簡単に移動できるのがいい。
 一方の音質はレンジが狭くて硬い印象の音だ。スピーカーはこのクラスのラジオとしてもかなり小さめの2.7センチで、その分どうしても低音が伸びない。音量はレベル1~16まで出せるのだが、手もとで聴くなら4か5で十分。このぐらいなら、けっこう繊細な部分まで再生される。それでも上げていくと、レベル12ぐらいから歪みが大きくなる傾向があり、徐々にモゴモゴと雑多な音になっていく。
 とはいえ、常用域では十分な音量と音質で、聴いていて疲れるようなこともないだろう。

もっとも気になる手回し充電の能力は?

 ハンドルを回す時のトルク感は、重くもなく軽くもなく、実に心地が良いレベル。本体もホールドしやすく、構造にも無理がないため、ハンドルが実に滑らかに回っていく。回転速度の目安となる緑色のLEDランプもいい。取扱説明書によると、最低充電時間は3分間。それで、約18分間ラジオが聴けるという。
 手回し充電機能を使う前に、「手回し/電池切り替え」を「手回し」に切り替えておく。わずか3分ほど手回し充電しただけなのに、腕の筋肉がピクピクしている。音量をやや大きめのレベル6に合わせて試した結果、23分のFMラジオ受信ができた。音量によっても変わると思うが、かなりの健闘ぶりである。

ハンドルを引き出してみると、このような形に。
ハンドルを回すとそれなりに手応えあり。最低充電時間は3分間で、約18分間ラジオが聴ける。

 ちなみに、MJ-RR1の本体背面にはUSB端子(タイプA)があり、手回しは充電によって貯めた電力を携帯電話やスマートフォンに充電可能。満充電時には、スマートフォンで50分間の通話が可能な充電ができるという。90分間ハンドルを回して90パーセントの充電ということなので、さすがに気が遠くなりそうな道のりではあるが、あくまで非常時のライフライン。必要となる日が訪れないことを祈りたい。

USB端子の出力は4.91V/440mA。タブレットの充電は難しい

工業デザインとしては歴史に残る傑作

 MJ-RR1はとても実用的な手回し充電ラジオである。だが、それ以上に工業デザインの観点から見ても、本当に良くできている。決して安い価格設定ではないが、その分、微に入り細に入り様々な配慮がにじみ出ているのだ。
 たとえば、手回し充電ハンドルの収納部に微妙なクリック感があって収まりが素晴らしいとか、本体底面に微細な突起があって置いた時に底面が擦れないとか、充電出力のUSB端子(タイプA)にはバネ付きのシャッターが装備されていてホコリが入りにくいとか、普段使わない時刻合わせボタンは電池ボックスの中に隠されているとか、電池ボックスには最後の一本をスムーズに取り外すための電池取り出しツマミが付いているとか、最終的に廃棄する段階でニッケル水素電池を取り外すための分解手順が取扱説明書に掲載されているとか、ほとんど目に触れることがない部分まで考え尽くされているのがわかる。
 無印良品のMJ-RR1は、家電メーカーとは別の視点で作られた傑作である。

文/手島伸英(横浜探偵団)

■無印良品 MJ-RR1仕様
サイズ:60W×146.5H×59Dmm
質量:351g
電源:内蔵充電池(ニッケル水素)/単4型乾電池×3
受信周波数:76.0~108.0MHz(0.05MHzステップ)
価格:税込み6,990円(2022年3月現在)

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