現在民放連では「スピーカーでラジオを聴こう」キャンペーンを展開してます。イヤホン聴取よりも疲れないのが最大のメリットで、radikoであってもBluetoothでスピーカーに飛ばして聴いている人も多いはずです。
ところで日本のラジオ受信機史上、もっともスピーカー聴取に適した機種は何でしょうか? いろいろ意見もあるとは思いますが、ソニーのホームラジオ・ICF-M780Nはまず最初の名前が挙がる機種だと思います。
ということで“スピーカーでラジオを聴こう”キャンペーン勝手にコラボ企画ということで、ICF-M780Nの使用レビューをご紹介します。残念ながら生産終了してしまいましたが、中古、新品含め簡単に入手できるので、ぜひチェックしてみてください。
受信感度・音質ともに最高レベルのホームラジオ
21世紀になって発売されたラジオから最高傑作を選ぶとしたら、筆者は迷わず「ICF-M780N」を選びます。もちろん、より高価で高性能なものやコンポのように、さらなる音質を追求したものもあるでしょう。しかし、ラジオとしての基本性能(音質、感度、選択度など)をとことん追求しつつ、サイズや重さ、電池の持ち、価格などすべてをハイレベルで融合させた製品は、ICF-M780Nの他に見当たらないのです。
ICF-M780Nは、AM/FMラジオ放送(補完放送対応)とラジオNIKKEIが受信できる据え置き型のラジオです。電池を含む本体重量はほぼ1kgと重い部類で、筐体も剛性が強くてしっかりとしています。しかし、デザインはゴツくなく洗練された印象です。ボタンやスイッチは必要最低限で表記も日本語なので、迷うことなく誰でも直感的に操作できるでしょう。中でも、音量調整は独立した大きなツマミになっていて、ヌルッと回ります。スカスカではなくヌルッとした操作感がちょっとクセになる感じ。頻繁に操作する部分だけに、こうした心配りが使う喜びにつながるのです。
機能はとてもシンプルで、ラジオの基本機能以外には時計機能、タイマー機能(経過時間後OFF/指定時刻ON)しかありません。もちろん、時計の時刻合わせも手動です。まさにシンプル・イズ・ベストといった感じですが、基本性能(音質、感度、選択度など)が極めて高いため、機能面の物足りなさはみじんも感じません。
ちなみに、ICF-M780NはAC直結でも使用できるのですが、単2形アルカリ乾電池3本だけで100時間もの受信が可能。回路設計に無理がない分、電力のムダも最小限度に抑えられているのでしょう。それにしても、就寝時以外聞き続けたとして、およそ1週間近くも使えるというのは立派です。災害時にも安心の1台といえるでしょう。
ICF-M780Nを購入してから、筆者はラジオを聞く時間が増えました。派手さはありませんが聞くほどに生活の一部に溶け込んでくる、それこそが名機の証なのです。
プリセット登録やタイマー設定はボタンを押すだけ
正面のボタン類は、受信に直接関係のないものを左に寄せるなど、設計者が使いやすさを追求している印象を受けます。
例えば、電源ON時に「おやすみタイマー」ボタンを押すと、順に90分/60分/30分/15分/OFFに切り替わってセット。これを電源OFFの状態で行うと、まず電源が入った上でセットされます。また、めざまし機能は本体電源のON/OFFに関係なく、機能のON/OFFやめざまし時刻のセットが可能です。めざまし機能をセットするためだけに、わざわざ電源を入れる必要がありません。
放送局のプリセットは、AM/FM/ラジオNIKKEI第1/ラジオNIKKEI第2それぞれに5局、計20局分を登録できます。上面のボタンを長押しするだけでOKです。
レンジが広いICF-M780Nの音質
ひと言でいって、とても優しい音がします。スピーカーのレンジは広く、低音から高音までまんべんなくカバーしている感じ。本体サイズやスピーカーの口径が大きくて音の鳴りに無理がないため、小さな音から大きな音まで音質が変化することなく、ボリュームを上げても音が歪むようなこともありません。
AM/FMラジオ放送それぞれの特徴を捉え、とてもきめ細かく1つ1つの音が際立って聞こえてきます。それは、最近のAMラジオではほとんど聞こえない「ハム(50/60Hzの電灯線ノイズ)」を聞き分けられるほど。もちろん、受信する人の経験値にもよりますが、多少混信があるような受信状況でも、目的の音を聞き分けられる、そんな底力を秘めています。
↑ICF-M780Nの音をスペクトログラムで分析。横軸が時間、縦軸が周波数分布であるが、アイワAR-MDS25に比べて、低域から高域までしっかり出ていることがわかる。
AM/FMラジオ放送の受信感度
感度は、AMラジオ放送/FMラジオ放送/ラジオNIKKEIともに十分高く、それでいて混信や混変調、歪みなどを生じさせないところにうまく収めている印象です。中でも、AMラジオ放送は、本体サイズに合わせて大型のバーアンテナを内蔵していることもあり、高感度ラジオの代名詞である「ICF-EX5MK2」(ソニー)と比較しても遜色ありませんでした。
一方、選択度は高過ぎず低過ぎず、絶妙なバランスに収まっています。ちなみに、フェージングは電波の強弱だけでなく、周波数の揺れも同時に生じることが多く、遠距離受信時にはAGC(=自動感度調整)の効きや時定数、選択度など、すべてが聞きやすさに影響してきます。しかし、ICF-M780Nなら、そういう場面でもその性能をいかんなく発揮できるでしょう。 文/手島伸英(横浜探偵団)
ICF-M780Nの受信感度
周波数 | 放送局 | SINPO |
---|---|---|
594kHz | NHK第一(菖蒲久喜) | 55555 |
810kHz | AFN(東京) | 55555 |
954kHz | TBSラジオ(東京) | 43444 |
1242kHz | ニッポン放送(東京) | 55555 |
3925kHz | ラジオNIKKEI第1放送(東京) | 43434 |
80.0MHz | TOKYO FM(東京) | 55555 |
81.3MHz | J-WAVE(東京) | 45454 |
81.9MHz | NHK-FM(横浜) | 55555 |
84.7MHz | FMヨコハマ(横浜) | 35343 |