数多あるラジオのなかで何が最高か…ひと晩考えてみた。
人に性格があるようにラジオにもそれぞれ個性がある。中波、FM、短波それぞれの受信性能に優れたもの、スピーカーがよいもの、メモリー数が多いもの、操作性がよいもの、そしてデザインがよいもの。これらすべてを加味したら、一体どの機種が最高峰なのか…。
たとえば誰もが認めるICF-EX5MK2(ソニー)であれば中波受信には文句はないが、操作性やデザインまでを考慮すると最高峰!と言い切るのは難しい。
で、ようやく導き出したのがソニーから1991年に発売されたICF-SW55だ。
「えっ? SW77じゃなくって55?」という声が聞こえてきそうだが、まぁ落ち着いてほしい。これは編集部(というか編集部員個人)の独断なので、多分に個人の好みが入っている。その前提を認識していただいたうえで、以下、SW55の素晴らしさを知ってほしい。
Point01.アナログダイヤルの装備
この機種の素晴らしさといったらやはりアナログチューニングダイヤルだ。PLLシンセサイザーレシーバーであるから周波数をダイレクトに打ち込んでの受信ができるわけだが、このダイヤルのおかげで電波を探りながらの微妙な操作が可能となる。昔ながらのアナログラジオのよさが楽しめる高性能機といったところだ。
高級リグを使いこなすような人からするとこのダイヤル機構は物足りないと思うかもしれないが、ソニーといえばジョグダイヤル。一昔前のガラケーでもソニー製携帯の最大の特徴はジョグダイヤルだったではないか。ソニーという企業を体現したラジオといってもよいのだ。それだけで推しである。
Point02.適度な機能性、適度なサイズ
SW55はほかのラジオに比べても高機能だ。25の放送局名、125の周波数プリセットがメモリーできたり、SSB受信、ワイド/ナロー選択、スキャン機能などほしい機能は一通り備わっている。液晶表示部に目を移しても、Sメーターが備わるなど抜かりはない。
もちろんSW77のほうがメモリー数はもっと多いし(162の周波数、100の放送局名)、なんといっても同期検波機能もある。さすがは上位機種である。
しかしやはり特筆すべきはSW55のサイズ感。SW77が27.6W×17.25H×4.65Dcmなので二回りほどコンパクト、重量もSW77が1.48kgなのに対し、SW55は900g(電池含む)。カバンに入れて、外に連れ出すのにちょうどいいサイズなのだ。
本格的な受信はあくまでもSDRなどの受信機と外付けのアンテナに任せておけばいいという考え方をすれば、SW77は機能を詰め込みすぎなうえに、外に持っていくほどのコンパクトさがない。どうしても中途半端に感じてしまう。それよりは必要最低限、いやそれよりも二段くらい上の機能を詰め込みながらコンパクトさも実現したSW55の絶妙さは素晴らしいと思うのだ。
Point3.中波の受信感度もいい!
感度についてはAM、SW、FMそれぞれ問題はない。中波はかえって感度がよすぎて混変調を起こすことがあるくらい(同期検波機能がないのは目をつぶるとして、これが唯一の不満点ではある)。
ちなみにもっとも中波受信に優れているとされるICF-EX5mk2と比較してもそこまで際立った性能差は感じられなかった。中波好きにも自信を持って勧められる機種である。
Point4.デザイン/操作性
操作性を考慮したボタン配置などを見てみると、この機種は本当に考えつくされていると思う。スタンドを立てて「据え置き型」として使う場合は人差し指で操作するのでSW77との違いはさほど感じられないが、前述したようにSW77より小型であるため、両手でこの筐体を持って受信するケースもある(特に屋外)。その場合、右手の親指で、テンキーやジョグダイヤルが操作できるようになっているのだ。対し、SW77の場合は据え置きでの使用がメインとなるので、テンキーとダイヤルは下部に配置されている。用途別にデザインも差別化する芸の細かさはさすがソニーの面目躍如といったところだ。
その他、ザラザラとした塗装や、液晶部(世界地図、メモリーした局の表示など)、機能別に分けたボタンの色など、四半世紀前のものと思えないほどかっこいい。
ひとつ苦言を呈するのなら、デザイン性を追求したことで採用したであろうダクト型スピーカーの性能がいまいちなところか。
結論……やっぱり最高!
いまでも中古市場でSW55は人気がある。当時の定価(49,800円)とほとんど変わらぬ価格がつけられているが、もし機会があれば一度このラジオを使ってみてほしい。きっと気に入るはずだ。
ただ、この機種の場合、修理がしづらいため、中古品購入の際は程度をよく確認することをお忘れなく。
文/編集部