部屋で、外で、車で…生活スタイルに合わせた機種選び
音楽からニュース、防災まで、様々な情報を届けてくれるラジオ。最近ではスマートホンで聴く人も多くなったが、ふと電気屋さんの店先をのぞいてみると、その楽しみ方に応じた様々なラジオが販売されている。素敵なラジオ番組が聴く人の世界を広げてくれるように、素敵なラジオとの出会いは、その人の生活スタイルを豊かにしてくれる。そんなより深いラジオの楽しみ方を、ハードウェアとしてのラジオをジャンル、シーン分けしながら探ってみよう。
01 お手軽ラジオ/中華ラジオ
コストパフォーマンスの高さがウリで、電器店のラジオコーナーでも真っ先に目につくところに置かれているのが「お手軽ラジオ」。少し前まで、お手軽ラジオといえばAM専用機の独壇場だったが、AM/FMを一手に扱える専用デジタルICが流通するようになって、FMステレオ放送に対応する製品も増えてきた。地元局を受信するには十分な感度があり、1,000~3,000円程度で気軽に買えるので、まずは、気軽に買って試してみるのがオススメ。日本メーカーの弱体化と中国製品の台頭で、性能の良いラジオが安く手に入るようになってきた。
同様に、価格が安いかまたは同じ価格でも豊富な機能を詰め込んであるのが中国で作られた、いわゆる中華ラジオ。日本メーカーの委託製造ではなく、中国メーカーが直接市場に参入しており、TECSUNやSANGEANといった世界的ブランドも登場している。まだまだ荒削りだが、日本製にはない独特の魅力がある。
02 ホームラジオ
仕事から帰ってきたあとにリビングや寝室でラジオを楽しむ時間は、まさに至福。そんなおうち時間をゆったりと楽しむための小型家電が「ホームラジオ」だ。持ち運ばず、一定の場所で使うことを前提に作られているため、大きくてやや重いが、スピーカーのサイズを大きくできたり、アンテナ端子を装備できたり、余裕のある作りを生かした製品が多い。コンセントに接続してAC100Vで使用するのを前提としており、内蔵アンプの出力を上げるのに十分な電力が確保できるため、音に余裕がある製品が多い。
いわゆるCDラジオやラジオレコーダー、そして昔懐かしい真空管ラジオも、持ち運びを目的としておらず、AC100Vでの使用が前提なのでこのカテゴリーに含まれる。そういう意味で、トランジスターラジオが開発される前から存在しているホームラジオは、ラジオの元祖ともいえるのだ。
03 ポケットラジオ/通勤ラジオ
自由に持ち運んで使うため、小型軽量、かつ、シンプルに作られているのが、「ポケットラジオ」。電源は乾電池、または、乾電池型充電池のものが多く、電池が切れてもコンビニや駅の売店で容易に入手可能だ。中でも、ポケットラジオのいちジャンルである通勤ラジオは、省電力・小型化技術の結晶であり、たとえばSONYのSRF-R356は、単4型乾電池1本で100時間もの聴取が可能。ここだけは唯一、日本メーカーの製品が圧倒的に強く、中華ラジオには真似できない聖域といえるだろう。
通勤時の情報ツールとしてはもちろんだが、このところ地方局も自社制作の番組に力を入れているので、旅行や出張に行く時に一台持っていくと、その土地の風土や穴場情報に直接触れられる楽しみもある。普段から持ち歩くことで、いざという時でもポケットラジオが心強い相棒になってくれるはずだ。
04 ワールドバンドレシーバー/短波ラジオ
AMとFMの中間にある、短波と呼ばれる周波数帯を使ったラジオ放送を楽しめるのが、「ワールドバンドレシーバー」。短波は電離層と地表とのあいだで反射を繰り返しながら地球の裏側まで飛んでいく特性を持っているが、その特性から1970年代には多くの国が世界に向けて国際放送を行っていた。松下電器のクーガやSONYのスカイセンサーといった、ラジオの歴史に残る名機が生まれたのもこの頃である。
それから50年…。数こそ少なくなったが、海外向けの短波放送は健在で、中国やタイ、ベトナム、オーストラリアなど、日本向けに日本語短波放送を行っている国もある(P222参照))。そして、日本にも国内向けの短波ラジオ局「ラジオNIKKEI」があって、日本全国をカバーする唯一の民放として放送を行っている。電離層の状態によって刻々と受信状況が変化する中での受信は、なかなかスリリングで電波をつかまえている実感も強い。
05 お風呂&キッチンラジオ/現場ラジオ
頑張って働いた一日の疲れを流す、お風呂タイム。ぬるめのお湯にゆったりとつかるお風呂は、まさに癒やしの時間だ。そんなお風呂タイムのお供にピッタリなのが、「お風呂ラジオ」。時計やタイマーがついている機種も多いので、長湯が過ぎる人はうまく活用したい。水やホコリに強いのが特徴で、その防じん・防水性能はIPコードという数字で表される。たとえばIP54の場合は、防じん性能が0~6等級中の5、防水性能が、0~8等級中の4ということ。数字が大きいほど性能が高い。
そんな防じん・防水性能を生かして商品化されたのが、水回りで活躍する「キッチンラジオ」や、農作業や建築作業の現場で使われる「現場ラジオ」。特に、現場ラジオはmakitaやHiKOKI(旧日立工機)、Boschといった建築機器メーカーから発売されており、その建築機材っぽい堅牢で無骨なデザインが多くのファンを集めている。
06 防災ラジオ
地震や台風、土砂崩れなど、毎年のように起こる自然災害。そんな災害からあなたを守ってくれるかも知れない、守護神のような存在が「防災ラジオ」だ。防災ラジオというと、すぐに手回し発電ラジオが思い浮かぶ人も多いと思うが、手回し発電は主に避難したあとで電池が切れて、交換用の電池がない時に活躍する機能だ。
実はもっとも使用頻度が高いのがライト機能。停電が発生した瞬間から、安全なエリア(避難所)に避難するまで、もっとも危険な時間にあなたを守ってくれる。だからどれを買うか迷ったら、ライトが明るくて使いやすいものを選ぶといい。そのほか、身動きが取れなくなった時にサイレンで周囲に存在を知らせてくれるものや、地震の揺れを感知して電源が入るもの、緊急警報放送や緊急地震速報を受信して電源が入るものもある。災害情報を手に入れるためのラジオと避難用に持ち出すラジオを別々に用意しておけば、完璧である。
07 Bluetoothスピーカー内蔵ラジオ/ラジスマ
スマートホンの普及とともに一気に売り上げを伸ばしたBluetoothスピーカーと、昔からあるラジオ。大きなスピーカーはかさばるから、合体させちゃえ…というラジカセ的発想から生まれたのが「Bluetoothスピーカー内蔵ラジオ」。スマートホンがあるんだから「radikoでいいじゃん」といわれそうだが、やっぱりラジオは電波で聴きたいもの。災害に強く、ネットワークの混雑やスマートホンの電池切れに影響されないのもいい。
同様にスマートホンとFMラジオをくっつけちゃったのが、民間放送連盟推奨の「ラジスマ」。ラジスマ専用の「radiko+FM」アプリを使うことで、radikoとFMラジオをシームレスに行ったり来たりできる。当初、対応機種が少なく(ドコモの「らくらくスマートフォン me」とauの「URBANO V04」のみ)先行きが心配されたが、現在は15機種に増えて各キャリアから自由に選べるようになった。
08 コンポ/単品チューナー
できるだけいい音でラジオを聴きたい、という人にオススメなのが「コンポ」。コンポでCDやレコードは聴くけれど、ラジオを聴いたことがないという人は意外と多い。大きなスピーカーで、余裕のあるいい音がするのはわかっているのにもったいない。これまでのラジオでは聴いたこともないような、奥行きや空気感を感じられるはずだ。radikoやradikoプレミアムに対応したコンポも存在するので、環境に応じた楽しみ方ができる。
「オーディオ沼」にハマりたいという人、すでにハマっている人には、単品チューナーの購入がオススメだ。2~3万円の製品でも効果は抜群だが、オススメなのは、McIntosh マッキントッシュのMR87。税込みの希望小売価格が70万円を超える超ド級のシロモノだ。当然、それに合わせたアンプやスピーカー、ケーブル…と考えると、気が遠くなる。でも、それがいいのだ。いい音への探求は止まらない。
09 スマートスピーカー
声でなんでもできると思って買ったけど、実際、スマートホンで調べた方が早いし、イマイチ使い道が見いだせない…。そう感じる人も少なくないスマートスピーカーだが、実は便利なradiko専用機として使えるのだ。使い方は、たとえば「OK, Google! J-waveを聴かせて!」と、機種に応じて話しかけるだけ。もともとスピーカーだから音も良いし、寝たまま声だけで操作できるのがいい。放送局の切替や音量、停止だってお手のもの。新型コロナ時代のトレンドである「非接触」の一歩先を行っている。これが数千円で手に入るのだから、使わない手はない。
radiko | radikoプレミアム(エリアフリー) | |
Google Nest | ○ | × |
Amazon Echo | ○ | ○ |
Apple HomePod | × | × |
Line Crover | ○ | ○ |
10 カーステレオ/カーナビ/ディスプレイオーディオ
このところ、ラジオ代わりにradikoを流しているタクシーをよく見かける。どうやらスマートホンとカーオーディオをBluetoothで接続して、故郷の放送局を聴いているのだ。昔からクルマには必ずラジオがついていたし、運転の視界を邪魔しないラジオとクルマの相性は抜群だった。だが、ここへきてその関係がより強固になりつつある。
クルマがネットワークにつながるカーテレマティクス(コネクテッドカー)技術の進化とともに登場した、Apple CarPlayやAndroid Autoといったディスプレイオーディオがそれだ。簡単にいうと、スマートホンと接続することによってその通信機能を活用し、ディスプレイオーディオの画面から操作を行うというもの。radikoのエリアフリーにも対応しているので、スマートホン側に「radiko auto」アプリを入れてクルマに乗り込めば、あとは、ディスプレイオーディオの操作で全国のradikoが楽しめるのだ。
文/手島伸英(横浜探偵団) 「ラジオ番組表2021年春号」(三才ブックス)より抜粋