【受信実験】FMラジオ 遠距離受信実験 in筑波山

【受信実験】FMラジオ 遠距離受信実験 in筑波山

最高の受信環境で
どれだけ受信できるか?

これまで数多くの受信実験を行ってきたが、「いつかはここで!」と思いつつも、いまだ行けていない場所があった。それが筑波山だ。標高約870mの頂上からは関東平野が一望できる、受信には絶好の場所。特に見通し距離にしか電波が届かないFMラジオの受信に適しているといえる。

今回ようやくその夢が実現、八木アンテナをスキーヤーよろしくかつぎながらケーブルカーに乗り込み、筑波山頂上に向かった。
(取材・文/編集部)

 筑波学園都市から車で数十分もいけば、遠くに見えていた筑波山も存在感が増してくる。平野のなかに突如現れた山といった感じで、FMラジオの受信地としては最適なことを再確認した。これだけ見晴らしがよく地上高が稼げる場所はそうそうないだろう。

筑波山。東の隅に位置するので、関東平野全域を対象とできる最高の受信場所である。


 東京の西に位置する高尾山という選択肢もあるが、高尾山は筑波山より標高が200mほど低く、北の位置にさらに高い山が存在するため群馬方面の局が取りづらいことが予想される。その点、筑波山は関東平野の北東に位置し、首都圏全域はもちろん、西方向の群馬県、さらに北方向の栃木県(平野部)までカバーできる地の利がある。ちなみに東京都心部にはおよそ70km、相模原がちょうど100kmくらいの位置となる。
 なお、グーグルマップや国土地理院の「地理院地図」では標高差がよくわかる地図が表示できるので、インターネットで確かめてみれば、いかに筑波山から東京方面に障害物が少ないかがよくわかるだろう。

国土地理院地図より。あらためて関東平野はでかい!

 さて、ラジオ、アンテナ、その他諸々を持ってケーブルカーに乗り込み、ほどなくして頂上駅に到着した。時期的に紅葉シーズンだったので平日にもかかわらずそこそこの人出だったので、邪魔にならないように人のいない隅っこに行きアンテナを組み立てる。
 さぁ受信!というところで、ここで信じられないミスに気づく。同軸ケーブルの存在をすっかり忘れていたのだ(車にも積んでいなかったのだからお恥ずかしい)。
 これがなければせっかくの八木アンテナも無用の長物。苦労して運んだのに何の役にも立たない。
 いや、そもそも山頂に大きなアンテナを持っていくことは読者のみなさんにとって現実的ではない話。より実践に即した実験に徹しよう!と自分の間抜けさを必死で打ち消すよう言い訳しながら、付属のロッドアンテナでの受信と相成った。

受信結果を検証してみよう!

 実際に現地で受信する前に、だいたいどの局が受信可能かを想定していた。
 まず首都圏の県域FM局中継局はだいたい受信できるだろう。問題は島の中継局。TOKYO FMの八丈島局(10W)は難しいとして、大島局は100Wあるのでチャンスありだ。三浦半島から受信できたという報告も聞いたことがある。
 次にFM補完局。90MHz帯の通称ワイドFMであれば、混信もほとんどないため、通常の80MHz帯よりも受信が見込める。新潟放送、長野放送、静岡放送あたりをチェレンジしてみたい。
 そして少し予想が難しかったのがコミュニティFM局だ。過去の経験から、20W局と10W局は飛びがまったく違うというイメージはあるのだが、障害物がなければ20W局でも50kmや100kmも飛ぶものだろうか? おまけにコミュニティFMが割り当てられている周波数は混み合っているので、それがネックになりそうだ。
 さて、実際受信した結果は表のとおりだ。

 ここから見て取れることを以下、補足、検証してみた。なお、受信した局の確認はCMやジングルで確認するか、インターネットを使ってradikoやコミュニティのサイマル放送で同じ内容かをチェックした。

出力と送信所からの距離が重要ポイント

1.同じ周波数の局
 特に76~79MHz帯はコミュニティ局を中心として割当てが混み合っており、たとえば77.7MHzには関東地方のコミュニティFMが4局も割り当てられている。こうなると、距離が近くて、出力が大きな局が受信できるのが普通であるが、たとえば77.7MHzではエフエム茶笛(入間)が受信できたが、入間より桐生のほうが直線距離で10キロほど近いが、桐生市は筑波山からは深高山や大岩山などで影になる位置なので受信できず、障害物が一切ないエフエム茶笛のほうがよく聞こえてきた。
 また、76.2MHzではFMぱるるんとラジオ高崎の両方を受信することができた。片方が強すぎるともう一方を打ち消してしまうのだが、どちらも適度な強さだったため、アンテナの方向を変えることで受信可能だった。方向がまったく違うのも功を奏したのかもしれない(水戸=北方向、高崎=西方向)。

2.隣りの周波数に与える影響
 FM電波の場合、電波が強いと隣(0.1MHz)にも影響を与える。たとえば81.9MHzのNHK-FM横浜局は電波も強いので、81.8MHzも82.0MHzにも被ってしまい、微弱な電波をかき消してしまう。そのため最大出力である10kWやスカイツリーの7kW級の局の両隣りの周波数に割り当てられていない。

3.県域局の本局(出力1kW以上)
 首都圏にある県域局の本局や、NHK-FMのキロワット局については軽々受信できることは明白だったが、意外にも受信できたのはNHK-FM(新潟)、FM-FUJI(坊ヶ峰)、FM NAGANO(本局)あたり。どの局も筑波山に至るまで高い山があるため難しいと思っていたが、電波が回り込んで伝わるのか受信ができた。ちなみにNHK-FM新潟と同じ場所、同じ出力のFM新潟が受信できなかったのは、それより強い局(おーらじ)があったからだと推測できる。FM NAGANOについてはまったくの想定外だったが、調べてみると送信所が2000m級の高地に設置されていることがわかった。筑波山に届くまで山々が連なっているが、送信地よりも低いので直線距離で180kmほどあってもなんとか届くのだろう。
 また、逆に意外にも受信できなかったのはふくしまFM(郡山)。距離的には新潟よりも近いのに受信できなかったのは隣のNHK-FM(横浜局)の影響なのだろう。

4.県域局の中継局(出力1kW未満)
 中継局に関しては受信してみないとわからないものが多かったが、TOKYO FMを例にとってみると、距離的には遠い檜原局は300Wというパワーもありかなりクリアに受信することができたの対し、100Wの新島局は230kmという距離と、地元局であるエフエムかしまの強い電波に遮られてまったく受信できず。また青梅局はコミュニティと同じく20Wだが楽に入感、八王子は10Wということもありギリギリ聞こえるか聞こえないかという程度だった。
 指向性の強い八木アンテナであればもしかしたら新島局が受信できたかと思うとただただ残念である。

5.FM補完局
 90MHz帯のワイドFMは単独で割り当てられているケースがほとんどなので、混信が少ないという利点がある。そのため、微弱な電波でも受信できるケースがあり、80MHz帯ではムリだった福島からの電波もなんとか受信(ラジオ福島)。このほか信越放送や新潟放送も比較的簡単に受信できた。「ワイドFMはよく飛ぶ」とよく言われるが、「混信しない」点も大きいのだと思った。(※なお、当時は茨城放送のつくば局開局前なのであしからず)

6.コミュニティFM局
 20W局と10W局の差はかなり感じた。コミュニティFMは周波数が混んでいるため、単独で割り当てられるケースはほとんどないため、10W局はだいたいそれより出力の高い局に潰されるのだ。ただ、同じ周波数や隣の周波数に強い局がないと、FMえどがわのようにクリアに受信することができた。
 今回受信できたコミュニティFM局でもっとも遠距離局だったのが、FMブルー湘南(78.5MHz)。直線で110kmも離れた局ということもあり一方向しか受信できるポイントはなかったがなんとか確認に成功。これは「湘南」というものの送信アンテナが高台にあることと、海沿いを飛んでいくのでかろうじて受信できたのだと考えられる。

まとめ
 外部アンテナがなくロッドアンテナだけで、こんなに受信できるとは正直思っていなかった。見通しさえよければ20Wでも100km以上飛ぶのだ。いつか八木アンテナを使えばどれだけ受信可能なのかを確かめてみたい。
※「ラジオ受信バイブル2019」(三才ブックス)の記事より

山頂からの眺望。ラジオを聴くなら筑波山!

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